ご挨拶と理念

興法利生(こうぼうりしょう)

 昭和21年、宝山寺社会事業部「宝山寺愛染寮」が滝寺に創設された趣意は、真言律宗の大本山であり、その宗祖である興正菩薩叡尊(こうしょうぼさつえいそん)の流れを汲む宝山寺関係者の宗教者としての実践に他なりません。興正菩薩の思想、理念は、「志存興法、念在利生」という言葉に簡潔に表されています。

”私の志(行動したり、事業をなしたり、進んでいこうとする決意)は、法(仏法、正しい教え、正しい生活規範、正しい価値観に基づいた生活、戒律など)を興す(世の中に広めること)である。私の念(いつも抱いているおもい、離れない思い)は、生(衆生、迷い苦しんでいる人々)を利(利益を与えること、助けること)することである。”

 こうした宗祖立宗の精神は、「興法利生」という言葉で表され、これが当法人が創設以来かかげてきた基本理念となっています。

院長挨拶

「銀(しろがね)も金(こがね)も玉も何せむに まされる宝子にしかめやも」と万葉の歌人山上憶良が詠んだとおり、子に勝る宝はありません。
 乳児院は、様々な理由で保護を必要となった乳児を預かり育むところです。
 いこま乳児院は生駒山の緑に囲まれた静かな環境の中で、保育士、看護師など専門職員が24時間包括的養育体制の下、ひとりひとりの子どもの心身の発達に合わせたきめ細かな養育を行うよう努めています。乳児の発達は著しく、この時期は人間形成の土台となる大切な時期です。担当養育制をとり、安心して生活できる子ども達の「もうひとつのお家」なのです。
 日々の生活では、「ほんまもん」を見たり触れたりすることを大切に、豊かな社会的体験を積ませて、子どもの「生きる力・耐える力・よろこぶ力」をしっかりと育んでいきたいと思っています。
 いつも私達職員は乳児院という施設の時間的限界と戦っています。子どもを巣立たせるまで子ども達に寄り添い「あーちゃん」として努力を惜しまず、ひとりひとりの子どもの最善の利益を追求していきます。
                                    院長 辻村万里子

運営方針

1.一貫した養育方針に基づき、職員間のチームワーク(和の精神)を大切にし子どもの保育看護に当たる。
2.健康的な身体と心の土台ができる乳幼児期の環境を与える施設として、清潔と安全に努める。
3.子ども1人1人の発達に応じた対応を心がけ、ゆったりとした雰囲気の中で恵まれた自然を活かし成長発達を促す。
4.大人との密度の濃いかかわりを持てるように信頼関係を作り、情緒の安定に努める。
 (グループ担当とその中で個別担当制を実践)
5.家族機能の代替と地域における家庭支援・育児支援のできる施設として開かれた乳児院を目指す。

基本方針

① 乳幼児の個々の発達を把握し、運動機能や体力をつけ、三つの力(生きる力・耐える力・よろこぶ力)が自然に身に着けられるよう養育看護に努める。
② 子どもたちの最善の利益を保障するため、どのような子供にも対応できる専門的養育機能を充実させるよう努める。
③ 保護者の中には、子育てに不安や負担感を持ち、育児の知識や技術を持たず、家族関係が複雑なケースが増加しており、保護者支援やアフターケアの充実に努める。
また、施設入所の不必要な長期化にならぬよう、里親委託の推進に努める。
④ 児童相談所からの一時保護委託された子どもに対しても、きめ細やかな養育看護に努める。
⑤ ショートスティ等の子育て支援機能は虐待予防にも繋がる重要な機能であり、積極的に推進するよう努める。
⑥「何人も、子どもに対し、虐待をしてはならない」。
保護者による虐待のみならず、そもそも本来保護すべき子どもに対して何人も「虐待」をすることは許されない。
職員においても虐待に対する認識を常に持ち、お互いに確認をしあうよう努める。

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清瀧山 大乗瀧寺 (通称:滝寺)
 太平洋戦争の終結、日本の敗戦はお寺の宗教的な使命にも大きな影響を与えることになりました。戦争で親を失った子どもたちや行く場を失った子どもたちが巷にあふれ、荒廃した街の姿を見て立ち上がったのが、宝山寺住職駒岡乗圓とその弟子、辻村泰圓等真言律宗一門の徒でありました。
 終戦の翌年、昭和21年(1946)には、この滝寺の庫裡に宝山寺愛染寮を開設、恵まれない境遇の子どもたちとともに暮らす児童養護施設が設けられました。愛染寮寮長を命じられた滝寺住職辻村泰圓は、その後、社会福祉法人宝山寺福祉事業団を組織設立、滝寺境内にいこま乳児院、いこま乳児保育園、特別養護老人ホーム梅寿荘などを次々と開設。社会福祉法人宝山寺福祉事業団は、今では、生駒市、奈良市などを中心に、赤ちゃんからお年寄りまで多くの福祉施設と福祉事業を展開していますが、ここ滝寺がその宝山寺福祉事業団の中心となっているのです。

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